近 況 紹 介

「初女さんのお料理」

「森のイスキア」を主宰する 佐藤初女さん 岩木山の麓、湯段でいやしの家「森のイスキア」を開く、佐藤初女さんの初めてのお料理の本が完成しました。 表紙には、一心にすり鉢でゴマをあたる初女さんの姿があります。

 私が初めて初女さんに出会ったのは、今から十七年ほど前。 イスキアに取材に行くと、龍村監督がちょうど「地球交響曲〈ガイアシンフォニー〉第2番」を撮影している所でした。 台所に座って、菊の花をむしっていた初女さんの姿が印象に残っています。

 取材で何時間インタビューしても、「私は特別なことはしていません。 ただ来る人の話に耳を傾けているだけ」と話す初女さんに、新米記者の私は当惑するばかりでした。 数時間が経ち、夕暮れも近づいたころ、「お腹がすいたでしょ。ご飯を食べていきなさいな」と出してくれたのが、初女さん手作りのご飯と味噌汁、漬け物でした。 それをいただいた時、何かがコトンと落ちてきて、解ったような気がしました。
 
 悩む人にアドバイスするわけではない、ただ来た人の話をじっと聞いて、落ち着いたころに手作りの食事を一緒に食べる。 それが何よりの「お薬」となって、人は元気になって帰っていくのだとその時、実感しました。

 そんな初女さんのお料理本はたくさんの人に待たれていたものです。 「初女さんのお料理」のページをめくると、「森のイスキア」の豊かな時間に包まれました。 レシピは「その季節が来ると食べたくなるもの」「わたしが毎日食べているもの」「イスキアで喜ばれたお料理」の三章に分かれていて、ふきみそ、なすのしそ巻き、おむすび、にんじんの白あえなど四十ほどの料理が写真と共に紹介されています。 思わず「食べたい」とつぶやきたくなりました。 章の合間には初女さんの食への思いもつづられていて、「食こそ命」と初女さんは言い切ります。

 紹介される料理は、津軽の日常の食卓に出てくる総菜ばかりです。 なぜ今、主婦の友社から、初女さんの料理本が出版されるのでしょう。 それは時代の要請に他なりません。 食や農業をないがしろにしてきたツケが今の日本に回ってきたことに、人々はやっと気づき始めました。 地産地消、エコ、そんな言葉がもてはやされ、流行のようにメディアで取り上げられていますが、そんなことはもう何十年も前からやっていますよと初女さんは笑うことでしょう。 時代がやっと追いついてきたのです。

 この本のキーワードは「よく見る」と「よく聞く」。 初女さんは食材をよく見、食材の声を聞き、どうしたら最大限に生かすことができるかを常に考えています。 「米はその時ときどきで状態が違いますから、お米の吸水の仕方をよく見て水の量を決めています」。

 それは自然の姿をよく見、悩む人の声に耳を傾けてきた、初女さんの生き方そのもの。 丁寧に生きる日々の在り方に頭が下がります。

 命が活かされるように、慈しんで作った初女さんの料理だから、そこから人は力をもらうのでしょう。 「おむすびを握るだけで人になぐさめを与えることができると思うと、それは小さいことのようだけれど、大きいことなのだと思います」。 初女さんのこの言葉に、食の大切さの原点を見る思いがしました。

 「めんどくさい」という考え方が地球を破壊していくと話す初女さん。 この国がどのように変わればより良い方向に進めるのか。 この本の示す哲学は、道しるべの一つとなるに違いありません。               
                                     (清水典子 文責)
                        (東京在住・インタビューアー&ライター)




「佐藤初女さん講演会」


「森のイスキア」を主宰する 佐藤初女さん 岩木山の麓で
訪れる人々に安らぎを与えてくれる場
森のイスキアを開く佐藤初女さんの講演会とビデオ上映会が
10月12日午後1時から
弘前市民会館で開かれます。
「出会いは未来をひらく」というタイトルで
これまでにご縁を得て出会った方々のこと
人生の出会いや出来事
それらのもつ意味など
お話くださいます。
受け入れること
今を生きること
さまざまな人が抱える思いに
耳を傾け
受け入れてこられた初女さんならではの
ことばの世界を体験ください。
ビデオは森のイスキアの自然や
初女さんが食事を作る様子
日々の活動などが映像で綴られ
イスキアを訪ねてきた人々との
出会いも描かれます。
チケットは一般が2000円・学生が1000円
当日券はそれぞれ500円プラスになります。
チケットは紀伊國屋書店・harappa・弘大生協などで販売。
申込はイスキアファンタジアHP http://ischiafantasia.com
問い合わせはイスキアファンタジア0172−33−3260(葛西さん)へ。
                        
                                    (写真撮影 長谷川正之さん)

                                                           (清水典子 文責)
                        (東京在住・インタビューアー&ライター)



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