ふるさとへの思いを音楽で伝えたい
  小山内たけともさん                         藤崎町出身の作曲家
 「アデランス〜」のCMメロディの作曲者として知られる小山内たけともさん。「モーツァルトを尊敬し、民謡を愛し、演歌に涙し、子どもの歌にルンルンする万年青年」を自称します。
小山内さんのCD「らくがき・Piano」を聴くと、繊細でロマンチックなメロディラインが広がり、万年青年の持つ感性の豊かさに触れたような気持ちになりました。
十八歳で上京。それから半世紀近くが過ぎ、今改めてふるさとへの思いを込め、組曲「津軽の四季」の作曲に取り組んでいます。
 心に浮かぶ故郷の四季の彩りは、年齢を重ねるごとに鮮やかになってきたといいます。ふるさとへの思いを形にしたい。そんな時、一冊の本に出会いました。「和菓子で描く弘前」。津軽の四季の移ろいを表した和菓子の数々が、顔料で描かれた画とエッセーで表現されています。
「観桜会」「春待月」「宵宮」「ねぷたっこ」「まるめろ」「朔日山」。幼いころに接した情景がよみがえり、心の中にゆっくりとメロディが浮かんできました。
首都圏に住む藤崎町出身者でつくる「ふるさと藤崎会」では毎年、修学旅行で上京する藤崎中学校の三年生たちに、東京で活躍する先輩の話を聞く会を開いています。今年は小山内さんが講師を務め、出来たばかりの曲「観桜会」を生徒たちの前で披露しました。ふるさとをテーマにした曲を東京の真ん中で聴いた中学生たちは、どのような思いを懐いたでしょうか。「ふるさとに誇りを持ってほしい」と小山内さんは生徒たちに語りかけました。
 そんな小山内さんも、東京の大学で作曲を学び始めたころは、津軽弁がなんだか「めぐさぐ」思え、津軽出身であることをなるべく周りに知られないように努力していたことがあったといいます。「音楽というのは感性だから、キレイな日本語を話さなくてはなるまい、なんて考えて長年親しんだ津軽弁を切り捨てることに専念したのだから、若気の至り」と苦笑します。
 大学を卒業し、NHKのラジオ番組の編曲と指揮を担当していたころのこと。東京に同化しようと気を張る二十代の小山内さんを、やさしく諭したのはふるさとの大先輩淡谷のり子さんでした。
 「僕も津軽出身です」と自己紹介した小山内さんに、「あれェ、んだのがァ!津軽の人だっきゃジョッパリだはんで、志立てだ人サ、必ず成功すんだヨ。あんだもケパてくださいね」。
 励ましの言葉が津軽弁だったことにショックを受けると同時に、お国言葉を初めて美しいと思ったそうです。背負ってきたはずのふるさとを捨て去ろうとしていた自分の愚かさに気がついたのでした。
 以来、小山内さんのモットーは「人生ヤッパリ ジョッパリ ケッパリ」。津軽衆としてふるさとに恩返しをしたいという思いをずっと温めてきました。これまでも「ねぶた師一代」「ねぷたラプソディ」など青森を意識した作品を作曲してきましたが、今年の十二月十九日、ふるさと藤崎町の文化センター大ホールで初めての大きなコンサートを開くことになりました。タイトルは「朗読と演奏で描く 津軽の四季」。
東京から見た青森の素晴らしさ、望郷の思いを音楽で伝えたい。そんな思いを今静かに温めています。

「朗読と演奏で描く 津軽の四季」は12月19日(土曜日)午後2時から
藤崎町文化センター大ホールで開演。
第一部 朗読と演奏で描く 津軽の四季
第二部 青森って素敵!〜東京と青森をつなぐトークショー〜
入場料は大人2千円・中学生5百円
チケットは10月半ばから市内各プレイガイドで販売開始。
当日は午後1時から2時まで、藤崎町茶華道会の皆さんが煎茶とお菓子でおもてなしをしてくれます。
 




 

 


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