「生きることを励ますアート・
    
        美術館の魅力を世界に発信」

フリーキャスター・
十和田市現代美術館メディア担当顧問          十和田市出身東京在住
  

 
 小林ベイカー央子さん
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 小林さんのブログ「yokomotion」を読むと、今すぐ十和田市現代美術館に行きたくなる。小林さんはメディア担当顧問として、同館の魅力や企画を世界に発信している。

 小林さんの印象はあおあおとした野原のよう。広々と懐かしく草や木々の匂いを連れてきてくれる。「すべてに開いていたいと思います。自然界との繋がりを大切にしたい。目標は蓮のように根を張って生きること。花びらが散っても根っこは揺るがない蓮のように生きることをイメージしています」。

 小林さんは2004年から、十和田市現代美術館の準備に携わる「同館専門家委員会」のメンバーとなり、基本計画策定に関わってきた。開館後は四年間特任館長を務め、現在も情報発信と共にさまざまな企画を提案、実施している。

 十和田市現代美術館は意欲に満ちた美術館だ。開館から4年で全国から70万人が訪れている。全面ガラス張りの建物、ユニークな企画、面白い趣向、だれでもウエルカムというオープンな雰囲気。美術館なのに、そこは市場になったり、盆踊り会場になったり、子供たちの公園になったり、変幻自在。「子供のころ商店街が遊び場で、そこのみんなに育ててもらった。美術館が昔の商店街のようにいろいろな人と出会える場所、プラットフォームになるといいと思うのです」。どこからが美術館でどこまでが街かわからない、そんな美術館を目指す。

 忘れ去られていた「三本木小唄」を復活させ、草間弥生展のフィナーレでは、「草間弥生になろう!」と皆かつらをかぶって三本木小唄で盆踊りを踊った。昨年の夏には「今すぐ踊れ!」と題し、ホームレスの踊る集団「新人Hソケリッサ」を美術館に呼び、各展示室を巡って踊りを披露してもらった。

 「子供たちにアーティストと会ってもらいたい。アーティストは人といかに違うかを突き詰めている人。人と違っていい、人と違うってカッコイイと子供たちが気づく。大人もいろいろな苦しい状況にある時、アートやアーティストに出会うことによって、光を見つけることができるのでは」と笑顔を見せる。

 子供のころから空想家で、広い世界に憧れた。大学卒業後は仙台放送で取材記者兼アナウンサーとして5年働き、その後ロンドン大学に留学。帰国後はNHKBSのワールドリポートを担当した。「ロンドンではオペラやバレエを観たり、ワークショップに参加したり、生活の中に自然に存在するアートフィールドを体験できた。美術館と市民、アーティストを結ぶのが私の任務」と話す。美術館マルシェでは近隣の農家の作物とデザイナーがコラボし、アート広場で農作物をひとつの作品として見せる。「農業ってカッコイイ。身近にいる農家ヒーローの姿を子供たちにも見てもらいたいですね」。

 ユーモアやダジャレが大好きで、「目指すは上沼恵美子!」と不思議な目標を掲げる。「大変な時こそ笑いでくるむことができたら素敵だと思う。美術館で美しいものを見たり、笑ったり、楽しい時間をみんなでシェアしていけたらいいな」。

 この秋には青森県立美術館と十和田市現代美術館で奈良美智展が開催される。それとリンクし、青森市、弘前市、八戸市を巡るアートとツーリズムのドッキングも企画している。「全国の人に青森の魅力を知ってほしい。青森県には豊かな自然とアートがある。アートも自然も心を励ますパートナー。青森には豊かなものがたくさんあると地元の人や県外の人、世界の人に伝えていきたいですね」。アイルランドで妖精を見たとほほえむ小林さんこそ、愛らしい妖精のような人だった。


                                          (文責・清水典子)




 

 


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