「紋紗塗のシックな魅力を
もてなしのテーブルで発信」
「紋紗塗を使ったテ−ブルコーディネートで、津軽塗の魅力を全国の人に伝えたい」。弘前市のテーブルコーディネーター笹村恵子さんが東京ミッドタウンで開かれる「花とおもてなしのテーブル作品展」(「花・芸術文化協会主催」)に出品する作品には、こんな思いが込められています。
紋紗塗は津軽塗の一つとして江戸時代、弘前藩士の刀の鞘を装飾し、粋でお洒落な塗りとして愛用されました。明治時代になって一旦姿を消し、平成になってから弘前市の漆芸家、松山継道さん親子らの手により再現されました。
笹村さんは今回、松山さんにオリジナルの紋紗塗作品を作ってもらい、それらを使ってテーブルコーディネートを行います。グレーのテーブルクロスと黒と銀が織りなす文様のテーブルランナー。ランナーの幅と同じサイズで制作してもらった紋紗塗のプレートには可憐な花文様が浮き上がります。落ち着いた色調のプレートにリチャードジノリの白い皿が映え、バラの花を思わせる「ひねり塗り」を施した愛らしいお椀がのると、和モダンな紋紗の世界が完成します。
東京出身の笹村さんが紋紗塗に魅せられたのは、松山さんの作品との出会いから。艶を持たない紋紗塗のシックな重厚感、モダンな雰囲気、繊細な華やかさに、笹村さんは驚いたといいます。輪島塗の蒔絵が放つ派手やかさとは対極にある禁欲的な美しさ、品格のようなものに惹かれたのかもしれません。どのようなコーディネートをすれば紋紗塗が一番映えるのかにポイントを置きました。
同協会員で石巻市在住の氏家冨士子さんがアレンジした秋色、ダークレッドな花たちがテーブルを彩ります。シックな雰囲気に合わせ、ワイングラスと蝋燭(ろうそく)も黒で統一しました。
「テーブルコーディネートの世界では、漆というと輪島塗だと思われていますが、弘前の津軽塗、中でも紋紗塗のシックでモダンな美しさ、魅力を全国に発信したい」と笹村さん。
今回、プレートと椀を制作した松山さんは「艶のない塗りというのは紋紗以外、全国どこにもない。もみ殻の炭粉を作って漆に蒔き、丁寧に研ぎ出し、磨き仕上げをするのが紋紗塗。硫酸を垂らしても大丈夫というほど強いのが特徴です。紋紗塗の魅力を全国の人に知ってほしい」と話します。
伝統を持つ「和」の漆文化津軽塗と、洋皿やワイングラス、洋花とのコラボレーションは、どんな情景をつくりだすのでしょう。津軽塗が東京ミッドタウンを訪れる人の目にどう映るのか、楽しみです。
(10月21日付陸奥新報掲載)